趣味の本ですが、良い本でした。

私も子供の頃から刀鍛冶になりたいと、おぼろに思っていたことがありました。

25年前、玄門之会という新進の刀鍛冶グループの新作刀展に行って、著者の松田さんに会いました。
大学を出ているんだって、と出自の珍しさを聞かされていました。

彼は、鎌倉時代の刀を作っているらしく、当時の私には地味な波紋にまだ理解が及びませんでした。
地金や地肌もよく分からなかった。

参加者は藤安将平、大野義光、古川清行、宮入恵、江住有俊、廣木弘邦、上林恒平、錚錚たる刀工たちでした。

刀には品格が重要だ。とか、職人の仕事は、ある日、突然変わる。
とか、私たちの日常生活でも、懸命に追いかけている時には、同じ体験をしていることを気づかされる内容になっています。

また、「異端は、認められた瞬間に先端になる」という話や、様々な師を求めて勉強してきた経緯があります。
彼は勉強家で熱血漢でした。それに引き換え、私は何をやっているんだろうと。

添付の拵えは、前田耕作さん製作の天正拵えです。
室町時代の甲冑師鍔、金ウットリのキビとアワの目抜き、縁は山金の細く唐草をあしらったもの、中身は、そのとき買った直刃の大和伝で、則長写しです。

中身より着物のほうが高くつきました。安物の居合拵えと違うかって。職人の「決め」、「決まっている」とはこういう作品やね。