化石の岩山

我家のミカン畑に隣接して、化石の大岩がある。昔は石材として利用したらしく、護岸の石積み、住宅の造成に使用した。発破の痕があちこちにある。梅干し、のようなウニの化石があって、以前はたくさん転がっていた。石灰岩だから周囲が溶けて化石だけになる。

ところがよ、レジャー客が来て、それを必死になって取っていくものだから今は何もなくなっている。エライものだよ。小学生たちが先生の引率で30人ほどが来ると、もうどんな欠片も拾いつくしてしまう。趣味人や学校の先生が来ると、それはもう虱潰しだよ。

別の所にも同じような化石の岩山があったらしくて、その百姓が言うには、「昔はいくらでもたくさん転がっていたものが、今は何一つない。大したものだよ」と笑っていた。その人は煩いから岩山を発破ですべて壊してしまったと言っていた。

なんせ天然記念物なんかに指定されると、観光客? 私への攻撃で煩いことよ。それを笑ってのことだったのだ。由良町の白崎海岸は白い風景で有名だ。化石の石灰岩は灰色で、変成作用を受けたらしくカルシウムの結晶が所々にある。そんなものも今はないか。

大昔の日本列島の形成、歴史がバームクーヘンのように積み重なっている。カニや魚の化石があったから。我家の蜜柑畑は、化石の岩の下側だ。両脇と上の方は他所の土地になっている。私の畑を荒らさないでくれ。立ち入り禁止だ。電気柵もどれだけ壊されてきたことか。

侵入者には何を言っても通じない。ステンレスの細い線なんか目に見えないからね。猪の罠も仕掛けてある。怪我したら私の責任だと言う。アホらしい。大岩に通じる道は、他に三本ある。隣接する他の百姓は、立ち入り禁止だと言う。私有地だからね。

自分の畑に知らない人が押し掛けてきたら嫌なものさ。それで私に対する悪口合戦になる。もともと仲が悪いからね。嫌な話さ。もし、この岩山が貴重な自然遺産なら、それなりの管理が必要だろう。どうもそうはなっていない。化石を取りつくした岩山は、なんか廃墟を思わせる。

私の子供の頃は、五月五日のこどもの日に、てくてくと歩いて登って、岩山の上で弁当を広げて楽しんだものさ。素朴で、おにぎりとコンコが美味かった。地域の人々も集まってきたものよ。今は違うな。殺伐としている。私の蜜柑畑には入らないでくれ。

私有地、私道、私に権利がある。ぜひ、別のルートから登ってくれ。「立ち入り禁止」の看板を設置するつもりだ。