金の草鞋を履いて畑を歩け。

由良町でも桜が一斉に咲いている。シャツ一枚でも暑い。母親は有田のミカン農家の生まれだから、農家の諺をよく話してくれた。金の草鞋を履いて畑を歩け。畑にはいくらでもカネが埋まっている。有田の人は働き者で、母の実家でも常に何か仕事をしていたものよ。

我家は、その点、ボーッ、としていたかな。山一つ隔てただけなのに、文化の差があった。蜜柑畑には、取りこぼしの八朔が残っていた。「さつき」という。高級品だよ。とても甘く仕上がっている。1月、2月の八朔とは値段が違う。

池の土手には蕨が芽を出していた。これからフキ、タケノコが出るから、毎日繊維質ばかりだ。おかず代が安くつく。酒の当てにもなるからね。田舎暮らしもいいじゃないか。住めば都という。東京や大阪でののサラリーマン生活が夢のようだ。風力被害さえ、なかったらね。人々の狂気さえ、見なかったらね。