今年も100円売り場を始めた。

ゆら早生は色付くのが早いので、一番先に出荷することになる。小玉が多くてね。摘果して粒の大きさを揃えないから、小っちゃいものばかりよ。近所の百姓からも、ちゃんと作ればお金になるのに、と言われている。私にも分かっているけど、どうも苦手なんだろう。みかん作りには女手が欠かせないという。そのとおりだよ。

蜜柑畑も田んぼも、維持管理が目的でやっている。たまに赤字になることがあって、百姓も大変だな、と周囲の百姓たちのことを思ったりする。自然を相手の仕事だから条件はみな同じよ。こんな田舎町の百円売り場だから、いくら売れたところで知れている。盗られることの方が多い日もある。

店員のいるスーパーマーケットでも万引きがあるんだから、無人販売ならなおさらよな。盗癖の人は病気だと思っている。さぞ生きていくのに大変なことだろうと思う。貧しいとか貧乏とかではなく、そんな人とは仲良くできないでしょ。それが分からないからやっているんだろうけど。100円売り場は母が楽しみにやっていた。

阪和高速道路のないときだったので、結構よく売れたらしい。コツコツと溜めて、アパートが一軒建った。バブルの時代だったからね。両親はいい時代を生きたのだ。最後は旅行ばかりしていた。バカ息子は一人、百姓しながらこれも運命かと日々を過ごしてきた。いたずらに啾啾たらんや、と。(王陽明、啾々吟です)